当事務所所長の弁護士神谷惠子が、甲斐克則責任編集「医事法研究第9号」(2024年6月)に、「旧優生保護法調査報告書についての検討と残された課題」と題する論考(本論考)を投稿しました(https://www.shinzansha.co.jp/book/b10086311.html)。
旧優生保護法一時金支給法21条に基づく調査報告書の内容を整理、検討し、残された課題について言及したものとなっております。旧優生保護法の立法過程の問題性、その後に国が優生手術を拡大させてきた問題性などをまとめておりますので、ご参照ください。
また、本論考に【追記】しましたが、旧優生保護法国賠訴訟については、令和6年7月3日に、最高裁判決が出されております(下記URL参照)。
最高裁判例の概略は以下の通りです。
最高裁は、まず、憲法13条は、人格的生存に関わる重要な権利として、自己の意思に反して身体への侵襲を受けない自由を保障しているところ、不妊手術は生殖能力喪失という重大な結果をもたらす身体への侵襲であるから、正当な理由に基づかずに不妊手術を受けることを強制することは同条に反し許されないとしました。その上で、立法目的(特定の障害等を有する者が不良であり、そのような者の出征を防止する必要がある)で正当とはいえないものであることが明らかで、憲法13条に違反するとしました。
また、憲法14条との関係でも、不妊手術の対象者と定めてそれ以外の者と区別することは合理的な根拠に基づかない差別的取り扱いであるとして、違反であるとしました。
憲法違反が明白であり、国会議員の立法行為は国賠1条1項の適用上、違法の評価を受け、かつ、除斥期間の経過後の提起だという一事をもって請求権が消滅したとして国が損害賠償責任を免れることは、著しく正義・公平の理念に反し、到底容認できないとして、過去の最高裁判例を変更して、除斥期間の判断には当事者の主張が必要で、かつその主張が信義則違反、権利濫用として許されない場合があることを認めました。
旧優生保護法国賠訴訟の事案についても、このようにして、除斥期間の主張が、信義則違反・権利濫用として許されないと判断をしております(裁判官全員一致。なお、三浦守補足意見、草野耕一補足意見、宇賀克也意見があります。)。
本論考では、旧優生保護法調査報告書と共に、このような最高裁判例の前提となった下級審判例についても言及しておりますので、併せてご覧いただければと思います。